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Meow

「なんだ、その格好」
 今日も忙しかった。仕事というものは、終わったと思うとどうして新しい案件が次から次へと湧き出てくるのだろう。自分が担当していた大きな取引が終わったが、一息つく間もなく、目の回るような一日を過ごした。
 疲れた体を癒すために念入りに湯浴みをした。香油で髪を整えてもらい、ゆっくりと体を休めようと自室に帰れば、目を疑うような光景が広がっていた。
 部屋の主は自分のはずだ。それなのに、自分よりも先にくつろいでいる様子の男は、頭に妙な飾りをつけていた。
「おー! お疲れ、白龍。かわいいだろ、これ」
 尖った二つの耳がついた飾りのモチーフは白龍にも分かる。愛玩動物として煌帝国でも人気の猫だろう。どこから入り込んでくるのか、禁城内でも見かけることがあった。白龍もたまに見かけると愛でたい気持ちになる。
 しかし、それを模した飾りをなぜいい歳をした男がつけているのか理解に苦しんだ。
「かわいい、かわいい。どけ、俺は寝るぞ」
 寝台の端に寝っ転がっていたジュダルを跨いで、体を沈める。柔らかくてなんて心地がいいのだろう。このまま眠りにつけること以上の幸せは、今の白龍には考えられなかった。
「おい、やめろ」
 ジュダルがちょっかいさえかけなければの話だ。適当にあしらったのが不満だったのか、彼は猫耳をつけたまま白龍の足元へ移動していた。ジュダルの手が着物の上から白龍の腰を撫でる。
「まぁまぁ、お疲れのご主人様にご奉仕してやるにゃ」
「それは……本当に、やめた方がいい。本当に……」
「ノリわりーな、白龍……ちょっと引くのやめろよ」
 ノリが悪いと言われようが、自分より歳上の男が猫耳をつけているだけでも不可解なのに、その上、猫の真似事までしていると思うと肌がぞわりと粟立つ。恥ずかしげもなく堂々としているジュダルがどうかしている。
 白龍が顔を引き攣らせていると、豪快に着物の裾を捲られてしまう。
「……おい」
「寝てていいって、俺がしたいだけ」
 ジュダルは、まだ反応していない白龍のモノに手を添えた。そのまま口内に迎え入れられてしまい、悔しいことに腰のあたりが重くなる。反応しているのが自分でも分かった。しかし、このまま流されるわけにはいかない。明日も早いし、やらなければならないことは山積みなのだ。体調が悪くなることだけは避けたかった。
「ま、て」
 上体を起こして、止めさせるためにジュダルの頭に手をやる。その時に触れた飾りは思った以上に手触りが良かった。耳の部分はもちろん、頭にはめている部分も柔らかい素材でできていて付け心地も悪くなさそうだ。ふわりとした毛並みは、いつまでも触っていたくなる。ジュダルの行為を止めるのを忘れて、しばらく毛並みを撫でてしまった。
「ひにひった?」
「っそこで、喋るな」
 ここ最近は何よりも睡眠をとりたくて仕方なかったから、自分で抜くことはなかった。ジュダルもふらりと出て行ったり、暗黒大陸の調査に駆り出されたり、意外と忙しく飛び回っているから行為自体もご無沙汰だった。
「すぐイキそう」
「うる、さい……」
 よく考えたらこうして顔を合わせて話すのも暫くぶりかもしれない。朝早く部屋を出て、夜遅く帰る白龍は、ジュダルの寝顔を見ることが多かった。意地を張らずにこのまま身を任せてもいいのかもしれない。いや、朝イチで会議がある。明日の予定を考慮して、やっぱり止めようと決めたが、もう遅かった。
 ジュダルは慣れたように口の中で白龍のモノを舐め上げる。尿道を吸われ、裏筋を優しく舐め上げられると、あっという間に高められてしまった。どうしようもない快感を少しでも逃がそうとジュダルの頭に手をやり、敷布を蹴った。
「あっ……! もっ……」
「ん、イっていーよ」
 ジュダルが、完全に勃ち上がった白龍の性器に手を当てて、頭が激しく前後に動かした。時折、舌で遊ばれて我慢することができなかった。ジュダルの声を合図に達してしまった。
「はっ……」
「随分早かったな、ご主人様」
「それ、よせ……」
 性交の際に擬似的な主従関係を作りあげて興奮する者もいるらしいが、白龍はそういった感覚を持ち合わせていない。ジュダルもそれを分かってあえてやっているのだろう。彼がニヤリと笑って何かを呟いた。達した後の頭ではなんと言ったのか分からなくて、ぼんやりと頷いてしまった。
「こっち、慣らしてもいい?」
 ジュダルがいやらしい手つきで白龍の尻を撫でる。ここまできたらわざわざ確認をしないで欲しい。自分がやる分にはいいが、人にやられるのは余計に羞恥心がかきたてられる。小さく頷けば、ジュダルは香油を手につけるとゆっくりと指を入れた。人差し指が、腹の方に曲げられて擦られると勝手に体が動いてしまう。
「どう? なんか変な感じする?」
「いやっ……あ、とくにはっ、なんだ」
「こっちのはなし!」
 白龍に余裕があると思ったのか、ジュダルの指が出し入れする早さが上がる。そして、二本目を入れられる。二本の指が白龍の中で好き勝手に動き回って、白龍の弱いところを探るように責められる。
「んっ……あっ! やっ……」
 先ほど変な感じがするかとジュダルに聞かれなかったか。適当に答えてしまったが、どういうことだったのだろう。いつもより体が熱い気がする。慣らすためにジュダルが用意した香油は、いつも使っているものだったか?
「お、まえ! あっ……なに」
「お、ちゃんと効いてる? お前、毒に耐性あるから効かないのかなと思った! これ、催淫剤入りの香油」
 ウキウキしたようにジュダルが見せつけてくる香油は、派手な容器に入っていた。透明な瓶から見えるそれは、どぎつい桃色をしていた。
 どこでこんなものが売られているのか。帝国内で販売しているようだったらただじゃおかない。すぐに摘発してやる。
「もっと量あってもいいな」
 ジュダルはそう言って、先ほどよりも多く見える量を手の平に出して、両手を合わせている。
「やめっ……!」
「だってお前すぐに我慢できちゃいそうじゃん、気持ちいいから大丈夫だって」
 先ほど、いつもと変わらないくらいの量を使われただけでこんなにも体が熱い。これ以上の量が注がれたらどうなるか分からない。白龍は、抵抗しようとしたが、力が入らずジュダルの好きにさせてしまった。
「ふっぁ……!」
「おー、いい感じ」
 ジュダルがただ指を出し入れするだけでも体が異常に動いてしまう。自分の体と意識がバラバラになってしまうようだ。
「っは! な、なに……っんぁ」
 ジュダルの指が抜かれたかと思うと、そこそこの質量のものが中に入り込んでくる。無機質な感触のするそれは、ジュダルのモノではない。恐る恐る自分の尻を見れば、そこからありえないものが生えていた。
「な、んだ……これ……」
 ジュダルがつけている耳と同じ黒い色のしっぽが生えていた。
「尻尾! 耳があるから当然だろ、猫セット」
 そういうジュダルにこのまま気を失ってしまいたかった。尻尾もあることのなにが当然なのか分からない。人間から尻尾は生えない。これも煌帝国で売り出しているものだろうか。そうであるならば、風紀が乱れている。職権濫用と言われようと、なにかしらの処分を考えなければならない。
「これ、おもしれーんだ」
 性交時にジュダルが機嫌良く笑う時は、碌な事がない。そして残念ながら白龍のその勘は当たっていた。
「中で動くんだ。最近の魔法道具は色々あるよな」
 ジュダルが黒い丸いものを取り出して、何か操作したかと思うと、中に入っている棒が振動して左右に動き始めた。その動きは単調で、決して技術があるわけではない。熱に浮かされた体には、そんな刺激でも強すぎるものだった。快感から勝手に体が動いてしまう。そのたびに感じる箇所を微妙に刺激されるのもいけない。中途半端に高められて苦しい。
「やっ、め……! あっ、やぁ……ジュダ、はっ……んっ!」
 どうにか動きを止めてほしいと手を伸ばすが、なんの抵抗にもならなかった。
「気持ちいい? 白龍」
「っ、ころ、す!」
「物騒だな」
 自分ではもう自由に動かせない体を無理やりうつ伏せの状態にされる。体を回された時に前立腺が抉られるように刺激され、たまらず軽くイってしまった。
 それでも、中に入れられた道具は止まらない。腰だけを上げるような体勢になり、必死でもがいてもジュダルに止めるつもりはないようだった。
「っうあ! もっ……やめっ」
「尻尾振ってかわいー、白龍」
「っお、まえが……!」
「こっちもう止めてんぞ」
 なんとかジュダルの方を振り向けば、笑顔で持っていた道具をひらつかせる。いつから止められていたというのか。恥ずかしい姿を晒していたことに一気に白龍の顔に熱が集まった。
「そんなにいいんだ、これ」
 尻尾の付け根をジュダルが触る。その手は腰をたどり、脇腹を触って、胸元に添えられる。ジュダルが覆い被さるような姿勢になり、そのまま乳首を弄ばれる。
「んっ! んんっ!」
「こっちも弱いもんな」
 グリグリと強く愛撫されたり、弾くように弄られたりし、さらに体の熱が高められた。自分ではどうしたらいいのか分からない。
「ジュ、ッダ……! もっ、やぁ」
「イきたい?」
 羞恥心を捨て、大きく頷く。後ろに入れられただけの刺激じゃ足りない。早くジュダルのモノを入れて欲しかった。
「じゃあさ、ちょっと鳴いてみて」
「っはぁ?」
 聞き間違いだと思いたい。ジュダルは、先ほどまでつけていた飾りをあろうことか白龍に被せてきた。
「ほら、尻尾も耳もあってちゃんと猫だし……可愛く鳴けたらイっていい」
 ちゃんと猫だと? 
 白龍が気付かなかっただけで、ジュダルは酔っ払っているのだろうか。それとも頭がおかしいのか。もしかして先ほど語尾に『にゃ』をつけて話したときに適当にあしらった腹いせだろうか。
「ふざけっ……んぁ!」
「別に俺はいいけど……白龍のこと触ってるだけで楽しいし」
 ジュダルは、再び白龍の乳首を好き勝手にいじり始める。首元から耳まで舌を這わせられて、そのまま嬲られればたまらない。はしたない音が頭に響いてくる。もう一方の手は、白龍の勃ち上がった性器に伸ばされた。優しく刺激を与えられ、たまらず擦り付けるように動かすと、すぐに手を引かれてしまった。それを何度も繰り返される。
 死んでも思い通りになりたくない。でも、もう解放されたい。
「……っぁ!」
「え?」
「にゃ……ぁ……」
 もうこれで勘弁してほしい。やれることはやった。これでダメだというのなら後ろにいる男を気絶させて全ての記憶を無くすまでだ。
「っお、前……かわいい……」
 どうたらジュダルのお気に召したらしい。白龍には大の男が猫の真似事をして興奮する趣味はない。全く分からない男だ。
「ジュ、ダル……」
「はいはい、わかってるって」
 ジュダルは、尻尾のおもちゃを取り出すと自分の性器をあてがった。道具とは違って熱を持った一気に白龍の中に入ってくる。それは、白龍の弱いところを抉るように突いた。
「……っあぁ!」
 待ちに待った快感に入れられただけでイってしまいそうになるが、ジュダルがそれを許さなかった。白龍は陰茎の根元を握られ、射精を制限されてしまった。
「っや、だ! てっ、はなっ!」
「もうちょい我慢して! お前すぐイっちゃいそうなんだもん。どうせなら一緒にイこ」
 そんなことを言うならそんな風に激しくつかないでほしい。わけのわからない香油を塗りたくられて、好き勝手に弄られた白龍は限界に近かった。
「んんっ! っはぁ……あっあ!」
 目の前がチカチカしてくるようだ。早くイかせて欲しい。
「きもちー、ね、俺もいい?」
「……んっ!」
 その言葉に必死に頷く。ジュダルは、強く握りしめていた白龍の竿を解放した。揺さぶられ、白龍は頭の中が真っ白になった。ジュダルも息を詰めたかと思うと、ほとんど同時に達した。
「ま、待てって、白龍」
「仕掛けてきたのは……お前だ」
 白龍は、ジュダルの上に跨って腹を撫でた。上がった息は、いつまでも落ち着かない。
「あれだけじゃ……足りない」


「っいってー!!!」
 白龍が翌日、起きてまずしたことは、隣ですやすやと寝息を立てている男を寝台から落とすことだった。
「なにすんだよ!」
 意識がない時は、ボルグとやらは反応しないのだろうか。今度アラジンに聞いてみよう。
「なんで落とされたのか自分のしたことを思い返すんだな」
 昨夜使った耳やら尻尾やら、ぐちゃぐちゃになった衣服やらがそこらへんに散らばっていたが、視界に入れないように支度を始める。
「はー? お前だって結局、ノリノリだったじゃん!」
「ノリノリじゃない!」
 痛い、ひどいと文句を言うジュダルのことを無視していたが、それは聞き捨てならない。そもそもジュダルが変なものを持ってくるからだ。猫には罪がないが、これからしばらくは見たくない。
「嘘つけ! 最終的ににゃあにゃあ鳴いてたくせに!」
「鳴いてない!」
「いーや! 鳴いてた! なんなら俺がルフの記憶見せてやろうか!」
「っこの! 変態!」
 こんな男に構ってられるか。今日は、大事な会議があるんだ。早々に用意をして出ていこう。いつもより乱雑に髪を結い、怒りに任せて帯を締めた。

「はくりゅー」
 呼ばれた声に反応すると、再び寝台に入り込んで寝直そうとしている男にひらひらと手を振られる。
「いってらっしゃい、仕事がんばー」
 なんだか負けた気がして白龍も手を振る。
「……行ってくる」
 
 本当に腹立たしいことに、ここ最近の中で一番頭が冴えている。仕事が捗る一日になりそうだった。


2024/03/17 迷宮探訪無料配布